はじめに|この文章について
この記事でお伝えする
食品期限(消費期限・賞味期限)の考え方は、
消費者庁が公表している
「食品期限の設定のためのガイドライン」に沿った内容を、
現場の実務目線で、できるだけやさしく整理したものです。
新しいルールや、独自の考え方を
押しつける記事ではありません。
「いま現場でやっていること」を
否定せず、崩さず、
でも説明できる形に整える。
そのための考え方をお話しします。
この記事では、
考え方だけで終わりません。
後半では、
小さなお店でも無理なく続けられるように整理した
官能検査の「記入例」を使いながら、
実際にどう記録していくかも
具体的にお話しします。
食品期限について、こんな不安はありませんか?
自分で作った、食品を販売していると、
ふと、こんな不安が頭をよぎることがあります。
- この期限、本当にこれでいいのかな
- なぜこの日数にしたのか、聞かれたら答えられるかな
- 感覚で決めているけど、間違っていないだろうか
- いきなり保健所に聞かれたら、どう説明しよう
もし、少しでも
「ドキッ」としたなら、
それはとても自然な感覚です。
なぜなら、多くの現場では
これまでの経験や感覚を大切にしながら、食品期限を考えてきた背景があるからです。
安心してください。いまの期限は「間違い」ではありません
ここで、最初にお伝えしておきたいことがあります。
いま、あなたが設定している食品期限は、
必ずしも間違っているわけではありません。
- これまでの経験
- 商品の状態を見てきた感覚
- お客様の反応
それらは、食品期限を考えるうえで
とても大切な情報です。
問題になるのは、
「感覚で決めていること」そのものではありません。
その理由を、言葉として説明できないこと。
ここに、不安が生まれやすいのです。
食品期限で求められているのは「完璧さ」ではありません
消費者庁のガイドラインでも、
食品期限は、
- 科学的
- 合理的
な根拠をもとに設定することが求められています。
ただし、
すべてを検査データで固めなければいけない
という意味ではありません。
現場には、
- 人手の制約
- コストの制約
- 設備の制約
があります。
ガイドラインは、
「できない現場を責めるためのもの」ではなく、
現場の考え方を整理するための道具です。
この記事でお伝えすること
この記事では、
- 消費期限/賞味期限の基本的な考え方
- 期限設定に必要な「根拠」の作り方
- 官能検査という考え方を含めて
- 安全係数や、類似品(グルーピング)の考え方
- 外部検査をどう使えばいいのか
- 小さなお店でも無理なく続けられる記録の残し方
を、実務の目線で、順を追ってお話しします。
難しい数式や、専門用語を並べる記事ではありません。
「なるほど、そういう整理の仕方ならできそうだ」
そう感じてもらえることを目指しています。
まず押さえたい基本|消費期限と賞味期限の考え方
ここから、具体的な話に入っていきます。
食品期限を考えるうえで、
まず整理しておきたいのが
消費期限と賞味期限の違いです。
この2つは、
言葉としてはよく知られていますが、
現場では意外と混同されがちです。
この違いが曖昧なままだと、
- どちらの期限を設定すべきか迷う
- 根拠の整理がしづらくなる
- 記録を残そうとしても軸が定まらない
といった状態になりやすくなります。
まずは、定義をシンプルに整理してみましょう。
消費期限とは何か
消費期限とは、
「安全に食べられる期限」
を示すものです。
比較的、
品質の劣化が早い食品に表示されます。
たとえば、
- 加熱後すぐに販売する惣菜
- 冷蔵保存が前提の食品
- 微生物の影響を受けやすい食品
などが該当します。
消費期限を過ぎた食品は、
食べないほうがよいと判断されます。
つまり、
消費期限は「おいしさ」よりも
安全性を優先した期限です。
賞味期限とは何か
一方、賞味期限は、
「おいしく食べられる期限」
を示すものです。
こちらは、
- 品質の変化が比較的ゆるやかな食品
- 保存性のある食品
に設定されます。
賞味期限を過ぎたからといって、
すぐに安全性が失われるわけではありません。
ただし、
- 風味が落ちる
- 食感が変わる
など、
「品質の変化」が起きやすくなります。
賞味期限は、
品質の目安と考えると理解しやすいでしょう。
消費期限と賞味期限の違いを整理すると
ここで、一度整理します。
- 消費期限 → 安全性の期限 → 過ぎたら食べないほうがよい
- 賞味期限 → おいしさの期限 → 過ぎても直ちに危険とは限らない
この違いは、
期限設定の考え方そのものに大きく影響します。
どちらを設定すべきか迷ったときの考え方
現場でよくあるのが、
「この商品、消費期限?賞味期限?」
という迷いです。
ここで大切なのは、
表示を楽にすることではなく、
リスクをどう考えるかです。
判断の軸としては、
- 微生物の影響を受けやすいか
- 保存中に安全性が変わりやすいか
- 温度管理や取り扱いにブレが出やすいか
といった点を見ていきます。
迷った場合は、
より厳しい側(消費期限)で考える
という判断も、実務では珍しくありません。
これは「過剰に厳しくする」という意味ではなく、
説明しやすい判断でもあります。
ガイドラインでも示されている考え方
この考え方は、
消費者庁が公表している
「食品期限の設定のためのガイドライン」においても、
基本的な前提として整理されています。
重要なのは、
- どちらを選んだか
- なぜその期限にしたのか
を、
自分の言葉で説明できることです。
完璧な正解を選ぶことよりも、
考え方の筋が通っていることが求められています。
期限設定に必要な「根拠」の考え方 ― 官能検査を中心に ―
期限設定に必要な「根拠」とは何か
ここからは、
食品期限を「説明できる形」に整えるための
根拠の考え方についてお話しします。
「根拠」と聞くと、
- 検査データが必要?
- 専門機関に出さないとダメ?
- 難しい計算がいる?
と身構えてしまう方も多いかもしれません。
ですが、
消費者庁のガイドラインで求められている「根拠」は、
必ずしも特別なものではありません。
大切なのは、
どんな考え方で、その期限にしたのか
を、
第三者に説明できる形で整理しているかどうかです。
根拠は「一つ」である必要はありません
期限設定の根拠は、
一つの方法だけで決めなければいけないものではありません。
多くの現場では、
- これまでの経験
- 商品の状態を見てきた感覚
- お客様の反応
- 保存中の変化の様子
こうした要素を、
いくつも組み合わせて判断しています。
これ自体は、
間違ったやり方ではありません。
ただし、
それぞれが頭の中にバラバラに存在していると、
「説明できない状態」になりやすいのです。
そこで役に立つのが、
官能検査という考え方です。
官能検査とは、特別な検査ではありません
官能検査というと、
専門家が集まって厳密に評価する、
難しい検査を想像するかもしれません。
ですが、
実務でいう官能検査は、
もっとシンプルなものです。
たとえば、
- 見た目に変化はないか
- においはいつもと違わないか
- 味や食感に違和感はないか
こうした項目を、
あらかじめ決めた基準で確認すること
これが、官能検査の基本です。
つまり、
「いつもやっている確認」を
「記録として残せる形」に整える
それが、官能検査の役割です。
官能検査は「感覚」を否定しません
ここで、とても大事なことをお伝えします。
官能検査は、
感覚や経験を否定するものではありません。
むしろ、
- 経験
- 現場感覚
- 違和感に気づく力
これらを、
根拠として守るための道具です。
感覚で判断すること自体が問題なのではなく、
その判断を「説明できない状態」が
不安につながっているだけなのです。
「いつ・何を・どう見るか」を決める
官能検査を実務で使うときのポイントは、
とてもシンプルです。
- いつ確認するのか
- 何を見るのか
- どうなったらNGと判断するのか
この3点を、
自分たちの現場に合わせて決めておくこと。
完璧な基準である必要はありません。
同じ条件で、同じ目線で確認できること
それが、根拠としての強さになります。
官能検査の記録の仕方|私でも続けられる方法
ここまで読んで、
「官能検査という考え方があることはわかった」
「感覚で判断していい、というのも理解できた」
そう感じていただけたかもしれません。
ただ一方で、
じゃあ、実際には
何を
どこまで
どうやって残せばいいの?
という疑問も、同時に浮かんでいるのではないでしょうか。
実はここが、
多くの現場で一番つまずきやすいポイントです。
なぜ「記録しよう」とすると続かなくなるのか
官能検査の話になると、
- 少しでもメモを残しましょう
- 状態を記録しましょう
といった説明をよく目にします。
でも、現場ではこうなりがちです。
- 何を書けばいいのかわからない
- 毎回書く内容がバラバラになる
- 忙しくなると、真っ先に後回しになる
結果として、
「官能検査はやったことにしている」
「説明できる記録は残っていない」
という状態になってしまいます。
問題は、
やる気や意識の低さではありません。
「型」がないこと
これが、続かない一番の理由です。
この官能検査表について(正直な話)
ここでお見せする官能検査表は、
私がこれまで、
- 記録が続かなかった現場
- 形だけになってしまった官能検査
- 「何を書けばいいかわからない」という声
を何度も見てきた中で、
個人事業主や小規模なお店でも、
これなら続けられる
という視点で設計したものです。
「自由に書いてください」ではなく、
どんな情報を入れればいいのかが、自然にわかる型
それを目指しました。
【官能検査表(記入例)】

官能検査表①|基本情報の考え方
まず、表の上段にある基本情報です。
ここで大切なのは、
細かく書くことではありません。
- 商品名
- 原材料
- 包装形態
- 保存方法
- 想定している温度帯
といった、
「あとから見返したときに、
どんな商品か思い出せる情報」
が揃っていれば十分です。
完璧な商品仕様書を作る必要はありません。
官能検査表②|評価基準・判定基準の考え方
次に、評価基準と判定基準です。
ここは、
感覚を言葉に変換するための場所です。
- 見た目
- におい
- 味
- 食感
を、
「良い・可・不可」
あるいは
数値(3・2・1)などで整理します。
重要なのは、
毎回、同じ基準で見ること
です。
他人と比較する必要はありません。
自分の中で、基準が揃っていれば十分です。
官能検査表③|検査結果の記録
ここが、
官能検査の「本体」となる部分です。
ポイントは、
- 毎回、同じ項目を見る
- 感じたことを短い言葉で残す
- 変化があったかどうかに注目する
こと。
長い文章を書く必要はありません。
「やや硬さあり」
「風味が弱くなった」
それだけでも、
立派な記録です。
官能検査表④|総合評価の考え方
最後が、総合評価です。
ここでは、
- どこまでなら提供できるか
- どこからは避けたいか
を整理します。
ここで大切なのは、
「いつまで大丈夫だったか」ではなく、
「どこで線を引いたか」
を残すことです。
この判断があることで、
- なぜこの期限にしたのか
- なぜこの日数を採用したのか
を、自分の言葉で説明できるようになります。
官能検査は「特別な作業」ではありません
官能検査は、
検査機関に出す前提の
特別な作業ではありません。
日々の製造や販売の中で、
「ちょっと気になった」
「いつもと違う気がした」
その感覚を、
置き去りにしないための記録です。
型があれば、
感覚は十分、根拠になります。
次の章では、
この官能検査の結果をどう期限設定につなげていくか。
安全係数や、類似品(グルーピング)の考え方を使いながら、
もう一段、整理していきます。
安全係数とグルーピング|期限を「説明できる形」に整える考え方
官能検査の記録を見ながら、
「ここまでは大丈夫そう」
「このあたりから、少し不安が出てくる」
そんな感覚が見えてきたと思います。
ただ、この段階で多くの方が次にこう感じます。
じゃあ、
その感覚を、どうやって期限に落とし込めばいいの?
ここで登場するのが、
安全係数とグルーピング(類似品)という考え方です。
安全係数とは何か|不安を見越して余白をつくる
安全係数とは、
「ここまでは大丈夫そう」と感じた日数に対して、
あらかじめ余裕を持たせる考え方です。
たとえば、
官能検査の結果から、
- 60日目までは品質が保たれていた
- 90日目で「不可」と判断した
という記録があったとします。
この場合、
「60日まで問題なかったから、期限は60日」
とするのではなく、
- 温度変動
- 個体差
- 取り扱いのブレ
といった現場では避けきれない要素を考慮し、
60日 × 0.8
60日 × 0.7
といった形で、
少し短く設定するのが安全係数です。
※記入例では安全係数を0.8としています。
なぜ安全係数が必要なのか
官能検査は、
「そのとき、その条件」で確認した結果です。
実際の販売環境では、
- 毎回同じ温度とは限らない
- すべての商品が同じ状態とは限らない
- 忙しい日は、確認が遅れることもある
こうした現実があります。
安全係数は、
「検査結果を疑うためのもの」ではありません。
検査結果を、現場に持ち帰るための調整
と考えると、理解しやすいでしょう。
安全係数は「決め方」より「考え方」が大切
ここでよくある誤解があります。
- 安全係数は何%でなければならない
- この数値が正解
というものです。
実務では、
- なぜその係数にしたのか
- 自分の言葉で説明できるか
のほうが、はるかに重要です。
0.8でも、0.7でも構いません。
大切なのは、
官能検査の結果に対して、
現場のリスクをどう見積もったか
この考え方が整理されていることです。
グルーピング(類似品)とは何か
次に、グルーピングです。
グルーピングとは、
性質の似ている商品を、ひとつのグループとして考える
という方法です。
たとえば、
- 同じ製法
- 似た原材料構成
- 同じ保存方法
- 同じ包装形態
の商品が複数ある場合、
すべてを一から検証するのは、
現実的ではありません。
そこで、
「この商品群は、同じ考え方で整理できそうだ」
という単位で、まとめて考えます。
グルーピングは「手を抜くため」ではありません
グルーピングという言葉から、
「簡略化」
「検査を省く」
という印象を持たれることがあります。
でも、本来の目的は逆です。
- どこが同じで
- どこが違うのか
を整理するための考え方です。
違いが大きい商品は、
同じグループにしません。
むしろ、
「これは同じにできないな」
と判断できること自体が、
リスク管理につながります。
小さなお店だからこそ、グルーピングが効く
商品数が少ないお店ほど、
- 毎回ゼロから考える
- 人によって判断が変わる
といった状態になりがちです。
グルーピングを取り入れることで、
- 判断の軸が揃う
- 説明がブレにくくなる
- 記録の意味がはっきりする
というメリットがあります。
安全係数とグルーピングは「セット」で考える
ここまでの流れを整理すると、
- 官能検査で状態を確認する
- 「ここまでは大丈夫そう」を把握する
- 安全係数で余白をつくる
- 類似品はグループとして整理する
この流れが、
期限設定を「感覚」から「説明できる形」に変えていきます。
難しい計算は必要ありません。
考え方の筋が通っていれば、
それが根拠になります。
ここで大切なのは「完璧さ」ではない
もう一度、強調しておきます。
食品期限の設定で求められているのは、
完璧なデータ
絶対に間違わない数値
ではありません。
- なぜこの期限にしたのか
- どう考えて判断したのか
を、
自分の言葉で説明できる状態です。
ここまでで、
官能検査によって状態を確認し、
安全係数やグルーピングを使って、
期限を「説明できる形」に整える考え方を整理してきました。
完璧なデータや、
特別な設備がなくても、
考え方の筋が通っていれば、
期限設定は成り立ちます。
あとは、
その考え方を、
どうやって日々の記録として残し、
無理なく続けていくか。
ここが整えば、
食品期限の設定は、
「不安な作業」ではなくなります。
まとめ|感覚を、説明できる形に整えるということ
ここまで、
食品期限の考え方を、
・消費期限と賞味期限の考え方
・期限設定に必要な「根拠」の考え方
・官能検査の記録の仕方
・安全係数とグルーピング
という流れで見てきました。
お伝えしたかったのは、
「特別なことをやらなければいけない」という話ではありません。
多くの現場で、すでに行われている
・商品の状態を見る
・違和感に気づく
・経験から判断する
こうした感覚は、
食品期限を考えるうえで、とても大切なものです。
必要なのは、
それを否定することではなく、
説明できる形に整えてあげること。
官能検査の記録は、
そのための一つの「型」にすぎません。
完璧なデータがなくても、
大がかりな検査をしなくても、
・なぜこの期限にしたのか
・どう考えて判断したのか
を、自分の言葉で説明できる状態になっていれば、
期限設定は十分に成り立ちます。
実務でよくある注意点(経験から)
最後に、現場でよく見かける「あるある」を一つだけ。
官能検査を行うとき、
・検体だからといって、大きな袋にまとめて保管してしまう
・いつもより丁寧に作ってしまう
・念のためと、普段より念入りにアルコール消毒をしてしまう
こうした行動は、とても気持ちがわかります。
少しでも条件を良くしたい。
安全側に寄せたい。
その気持ち自体は、決して間違っていません。
ただし、
日常の製造条件とズレてしまうと、検査の前提が崩れてしまいます。
官能検査は、
「特別な状態」を見るためのものではなく、
いつもの状態を、そのまま確認するためのもの。
普段どおりの条件で行うことが、
一番大切なポイントです。
消費期限について補足しておきたいこと
消費期限の設定については、
・微生物の影響が大きい
・安全性の判断が難しい
といったケースも少なくありません。
そのような場合は、
外部検査を活用することも、現実的な選択肢です。
外部検査を検討する際には、
・どんな目的で検査を行いたいのか
・どこまでの根拠が必要なのか
を整理したうえで、
・管轄の保健所に相談してみる
・検査機関の内容や実績を確認する
といった進め方も、一つの方法です。
お問い合わせについて
もし、この記事を読んで、
・官能検査の記録を、自分のお店用に整理してみたい
・この考え方を、実際の運用に落とし込みたい
・どこまでやれば十分なのか、一度相談してみたい
そう感じた方がいらっしゃいましたら、
無理に進める必要はありませんが、
お気軽にご連絡ください。
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お店の規模や商品、販売形態に合わせて、
無理なく続けられそうな形を一緒に整理する
そんなお手伝いをしています。
「こんなこと聞いていいのかな?」
と思うような内容でも大丈夫です。
必要な方に、必要な分だけ。
その距離感を大切にしています。

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