おひとり様HACCPとは何か
――それ、もうHACCPかもしれません
手洗い。
トイレ掃除。
体調が悪いときに、無理をせず休むこと。
「いやいや、それはHACCPじゃないでしょう」
そう思った方もいるかもしれません。
その感覚は、とても健全です。
これらは、HACCPそのものではありません。
けれど、HACCPがきちんと機能するかどうかを左右する
いちばん大事な“土台”です。
この章では、その土台からHACCPを考え直します。
なぜ「おひとり様HACCP」という言葉を使うのか
HACCPと聞いて、こんな印象を持ったことはありませんか。
- 難しそう
- 書類が多そう
- 人手が足りない
- 小さい店には無理そう
実際に、1人で切り盛りしている飲食店や、
ご夫婦で営むカフェ、小さな工房、キッチンカーなどの現場では、
「やらなきゃいけないのは分かるけど……」
という声が多く聞かれます。
そこで私は、「おひとり様HACCP」という言葉を使っています。
これは、HACCPを軽く扱うための言葉ではありません。
国が定めたHACCPの考え方を、
そのまま小規模な現場に当てはめようとして苦しくなっている方へ、
“現実に合わせて理解し直す”ための言葉です。
小さいお店もHACCPの対象です
ここは、はっきりさせておきます。
小規模な飲食店や製造業も、HACCPの対象です。
食品衛生法の改正により、
すべての食品等事業者に衛生管理が求められています。
事業の規模に応じて、
- 「HACCPに基づく衛生管理」
- 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」
のどちらかを行う仕組みです。
小規模事業者の場合は、
業種別の手引書に沿った
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が基本になります。
ここで多くの方が、こう思います。
「大きな工場と同じことをやらなきゃいけないのでは?」
でも、制度はそうなっていません。
人が少ないこと。
1人で判断していること。
記録に割ける時間が限られていること。
そうした現実を前提に、
“手引書方式”という形が用意されています。
つまり、小規模事業者には
小規模事業者なりのやり方があります。
知らないまま言葉だけを聞くと、
「無理そう」という感情だけが残ります。
ここでは、その感情をほどいていきます。
ここで扱うこと/扱わないこと
このシリーズでは、制度の条文解説よりも、
「現場でどう判断するか」
を大切にします。
具体的には、
- HACCPの考え方はどこにあるのか
- 手引書はどう読めばいいのか
- 形式ではなく、何を守ろうとしているのか
- おひとり様でも無理なく続けるための考え方
を中心に書いていきます。
一方で、扱わないこともあります。
- 完璧なテンプレートの配布
- 記録を増やすことが目的になった管理
- 不安をあおるだけのリスクの話
- 「これをやらないとダメ」という押しつけ
HACCPは、誰かに評価されるためのものではありません。
自分のお店を、自分で守るための考え方です。
想定している読者の方へ
このシリーズは、次のような方を想定しています。
- 1人、または少人数でお店を運営している
- 衛生管理が大切なのは分かっている
- でも、どこまでやれば十分なのか分からない
- 書類や記録に追われたくはない
- それでも「ちゃんとできている」と言える状態になりたい
もし少しでも当てはまるなら、この先を読み進めてみてください。
国の制度との関係性
この記事は、国の制度を否定するものではありません。
厚生労働省が公表している
これらを前提にしています。
ただし、資料を読んだだけで
「明日から現場で回せる」と感じる方は多くありません。
私は、製造現場から品質管理、表示、検査、クレーム対応まで
一気通貫で現場を見てきました。
その立場から言えるのは、こういうことです。
資料は正しい。
でも、現場はもっと複雑です。
だからここでは、
「何が書いてあるか」よりも
「それを読んで、どう動くか」
を大切にします。
この章は“交差点”です
この第0章は、今後、
- 手引書の読み方
- 一般衛生管理の考え方
- 記録との向き合い方
- 関連記事
へとつながっていきます。
ここは完成して終わる場所ではありません。
何度でも戻ってきていい場所です。
次の章では、
なぜ多くの人が「HACCPは難しい」と感じてしまうのか。
その現場のリアルから、話を始めます。
補足:制度に関する確認事項
※本記事は厚生労働省公表資料等をもとに整理しています。最終的な制度判断や運用の詳細については、所轄の保健所等へご確認ください。


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